
我々の狙い
健康長寿の実現には、より早期(日常生活に大きな支障をきたしていない段階)からの介入が重要である。我々は、千葉県柏市における大規模高齢者コホート研究(柏スタディ)を基盤とし、高齢者のプレフレイルへの気づきと自分事化を促すための地域活動「栄養(食・口腔機能)、運動、社会参加の包括的フレイルチェック(以下、フレイルチェック)」を開発した。このフレイルチェックは、柏市在住高齢者を対象とした大規模高齢者コホート研究(通称、柏スタディ)により明らかにされたフレイル予防の3つの要素、「栄養(しっかり噛んで食べる)」、「運動(しっかり動く)」、「社会参加(しっかり社会とつながる)」を柱としている。参加する高齢者がフレイルについて楽しく学び、自分自身のフレイルの兆候を調べられる内容になっている。地域の様々な高齢者が自由に気軽に参加できることを目指し、フレイルチェックの実施場所は、市民にとって身近な地域サロン等としている。
高齢化率が27%を超えた我が国において、フレイル予防を専門職だけの手に委ねることは現実的ではない。地域資源を活かした、地域住民による、地域住民のためのフレイル予防を実現することが求められている。フレイルチェックは、我々が自治体と共催する養成研修を受講した高齢市民サポーター(以下、フレイルサポーター)の手により担われている。行政との協働の下、先輩フレイルサポーターが新たなフレイルサポーターの養成を手伝ったり、フレイルサポーターの中から活動全体を取り仕切るリーダーを育成したりするような試みも行っている
千葉県柏市から始まったこのプロジェクトは、神奈川県、福岡県、和歌山県、東京都、福井県に広がっている。今後、それぞれの地域におけるフレイル予防推進リーダー(フレイルトレーナー)の育成、フレイルチェックデータと他のデータベースを統合することによる全国規模のフレイル関連データベースの構築と分析、そして本プロジェクト導入自治体における健康長寿のまちづくりへの参画を戦略的に実行する計画である。最終的に、フレイル予防を通した健康長寿のまちづくりのモデルを構築し、全国規模の運動論に展開させ、要介護認定率や医療経済問題の軽減までつなげたい。
東京大学高齢社会総合研究機構
教授 飯島勝矢